これは、先にこのブログで紹介した森田健氏の「運命におまかせ」の中にある話である。
中国に「生まれ変わりの村」とされる村があり、ここの村人の多くが前世をはっきりと記憶しているのだそうだ。
だから前世で覚えたことをそのまま使えるので大工だった人が大工をしたり、前世は女性で今は男性に生まれたけど編み物が上手だったりする。
そのなかでもユニークなのが、死んで早めに生まれ変わってきたために、自分の孫と同じ学校に通っているという昔、おじいちゃんだった人の話で、一緒に孫と学校に肩を並べて通っている姿を勝手に想像してひとり笑ってしまった。
この「生まれ変わりの村」の調査取材を進めながら、森田氏は前世を覚えている人の証言にある一致点があることに気づく。
それは、前世の記憶を覚えているのは、
「あの世でスープを飲んでいないから」だということだった。
あの世には、大きな釜でグツグツとスープをつくっているおばあさんがいて、生まれ変わる直前にそのおばあさんから「スープ、飲むかい」と声をかけられるそうだ。
どうやらこのスープを飲むと前世の記憶が煙のように跡形もなく消えてしまうことになるらしい。
あたりに立ちこめるとってもおいしそうな故郷のように懐かしい香りがたまんなくて、ほとんどの人が「はい、飲みます」と言って飲んでしまうのだが、この「生まれ変わりの村」の人たちはなぜか「いらない」とすぐに断る。
なぜかというと、村には「あの世で『スープを飲むかい』と誘われたら、断りなさい」という古くからの言い伝えがあり、子供の頃からそのことを言われ続けているからだ。
記憶を失わないということは、
「永遠の命を持つ」ことを意味する。
「永遠の命」が欲しければ、スープを断りさえすればいいのである。
とはいえ、僕自身、スープを断った方がいいのかどうなのか、まだ、決めかねている。
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