2007年12月16日日曜日
第4回読書会を開催。宮城谷昌光「奇貨居くべし」
今年から仲間達と「読書会(内々では「観想会」と呼んでいる)」を開催している。
数年前に仕事の縁でつきあいが始まり人としても大いに尊敬している方から昨年末に宮城谷昌光さんの小説を薦めていただいた。
前々から書評や書店で見かけたり、読んだという人から話を聞いたりしていたが、中国史を舞台とする作品である点などになかなか興味を持てず手にしていなかった。
でも、この時は「これは良き機会なのかな」とふと思ったため読み始めたところ、いっぺんに”ハマってしまい”、半年ほどで文庫化している作品はほぼすべて読破していた。
そういう意味では今年前半は、宮城谷作品にどっぷりとつかった読書生活の日々であり、物事の実りには「天の時、地の利、人の和」の3つがそろうものだという故事を、なんとなく実感できる期間にもなった。
紹介してくださった方と一緒に飲むたびに話題は宮城谷作品になり、毎回話は白熱して盛り上がり、「どうせなら、しらふで仲間達にも声をかけて大勢でやろうじゃないか」ということで意気投合して、とうとう読書会を開くことになってしまった。
読書会は、作品を決めて、それを全員が読み、休日の午後3時に集まって自分が心ひかれた場面や感動した一節、疑問に感じた部分などそれぞれが忌憚(きたん)なく作品について意見を述べあうという場になっている。
顔ぶれは50歳代~30歳代まで年齢はさまざまで、人数は5~8人ぐらいが参加する。
残念ながら現在は男性ばかりの集まりだが、ぜひ女性の意見も聞いてみたいと思っている。
4回目となる今回のテーマとなる作品は「奇貨居くべし」(全5巻)だった。
この作品は主人公の呂不韋が一商人から一国の宰相のにまで昇り詰めていく波乱の生涯が描かれている。
どんな感じで読書会でのやりとりが行われているかその一例を少しだけ紹介すると、
Aさん:「私は2巻の334㌻の
『《人は、生きていることを、他人とはちがう表現において証拠立てよ》
孟嘗君(もうしょうくん)が暗にいっているのは、そういうことらしい』
の一文にひかれた。これは人ぞれぞれ生きていくテーマが異なり、その人の持ち味、役割があるはずで、それを早く見つけ役立たせていきなさいという意味と受け取った」
Bさん:「なるほど、なるほど。私は人のやることは同じ生き方のように見えても質と重さが違う。よくよく思考したのち、行動にもそれを表していきなさい、と言っているのだと取った」
Cさん:「僕は3巻の314㌻のこの一節を子供に伝えていきたいと思った。その部分は、
『ーーたれにとっても、結婚は重大事である。
と、鮮乙に教えられていると呂不韋はおもった。
伴侶になる者が、幸運をもっているのか不運をもっているのかわからず、父祖の徳をうけついでいるのか悪徳をうけついでいるのか、本人でもわからない。さらに、幸運と父祖の徳とを兼有していながら、結婚相手によってそれらが相殺されてしまうこともありうる。だから大志をもつ者としては、結婚を慎重にしなければならない。幸運は長つづきするはずがなく、一方、不運は長い。要するに、いま栄えている家の者と結婚すれば、まもなく衰運にみまわれ、いま零落している家の者と結婚すれば、不振をうけいれることになる。いずれにせよ、人は不幸であり不運であると認識し、そこから出発するつもりで、不運を幸運に転化する努力をおしまない人を伴侶にえらぶべきであろう。その努力とは、めだたない日常生活のすごしかたに、かならずあらわれているはずであり、その平凡な事実が、じつは結婚生活にとってきわめて重要であるとおもったほうがよい』
この一節です」
Dさん:「なるほどなぁ、自分の結婚生活について考えてしまうよな、この部分は」
Eさん:「その一節に通ずることで、2巻の185㌻に
『侈傲(しごう)の者は亡ぶ。貴賤を問わず、そうです。なぜ、天子や諸侯は亡びないのか。先祖の威徳がそれらの貴人を助けているからだ。それに気づかず、侈傲でありつづければ、三代で亡ぶ』
とある。自分を戒めておかないと、できれば徳を積んでいかないと次の代がその報いをこうむるということを教えてくれる。Aちゃん、あんたが社長からよく言われていることじゃないか。徳をつまなきゃ、Aちゃん、やばいよ!」
Aさん:「ごもっとも・・・・・(絶句)」
といった感じで、いろんな意見を出し合いながら、3時間ほどみんなで考えを交わしていく。
自分が読み流してしまったところが取り上げられて「なるほどな」と気づかされることも多々ある。
いずれの宮城谷作品も読んでいて楽しいということが共通しているが、史実に乗っ取りながら人の生き方、考え方、身の処し方など、示唆に富んだ部分が随所にあり、読んでいて自分を鑑みるための良き刺激となってくれる点が大きな特徴だ。
終了時の飲み会も大いに盛り上がり、師走の忙しい時期になんて贅沢な時間を過ごしているんだろうと至福のひとときの満喫を味わいながら帰路についた。
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