2008年3月26日水曜日

春のひだまりの中のお地蔵さん参り


 昼前に仕事で世話になっている石川県金沢市の木材輸入販売会社の社長から、「いま、羽田空港について1時間ほど時間があるから昼食を一緒にいかが」と電話があった。
 浜松町駅で大門駅に乗りかえて大江戸線で門前仲町に来てもらい、うまい蕎麦をごちそうになった。
 建築業界は昨年6月の建築基準法の改正が行われたが、その後の国の対応の遅れが原因で近年にない不況に見舞われている。明らかな“官製不況”で、普段は前向きで元気な社長も珍しく表情が暗い。
 蕎麦を食べ、コーヒーでも飲みに行こうと誘われたが、「天気もいいので、散歩がてら下町のお寺にでも参りませんか」と言うと、そうしようかということになった。

 もんなか(門前仲町の通称)の古寺である「永代寺(えいたいじ)さん」に向かう。
 歩きながら、ここにいらっしゃるお地蔵様に、半年間ほど鼻の調子が悪く3件も病院に行ったが治らなかったのをお願いして治してもらった出来事を話す。
 「叶うかもしれないので、お地蔵さんにお願いしてみては」と薦めてみると、
 「そうしてみようかな」という返事がかえってきた。

 お地蔵様へのお願いの仕方を社長に伝えると、
 「知らなかったよ、おもしろいなぁ」と笑う。

 1、お地蔵さんの真言である「おんかかかび さんまえいそわか」を3回唱える。
 2、自分の住所と名前を言う。
 3、お願い事を伝える。
 という手順である。
 いずれも思うだけでなく、言葉にしたほうがいいと僕は思っている。少なくとも真言は「ごあいさつ」なので言葉にしたほうがいいと伝える。

 社長はお地蔵さんの「真言」をメモ帳に熱心に書き込み、永代寺境内の3カ所のお地蔵さんの前で、言葉にしながら長いこと何かをお願いしていた。心のうちがいくらかでも晴れて軽くなることを僕も願う。

 「永代寺さん」での参拝を終えるとすぐそばにある「お不動さん(深川不動尊)」に行く。
 ここのご本尊はその名の通り「不動明王」かと思いきや、実は「大日如来」である。
 なぜかというと、「仏様にも地位がある」ことが背景にある。
 不動明王は「明王」で、「如来」や「菩薩」より仏としての地位が低い。そのため不動信仰では真言密教の大本尊である「大日如来」の怒りの姿が不動明王とされている。そのためご本尊は「大日如来」なのだ。

 ちなみに仏様の地位は、「如来」、「菩薩」、「明王」、「天」の順である。初めて聞いた時もそう思ったし、今も仏様に地位があるなんてなんだか不思議な感じがする。

 不動明王の真言は
 「のうまく さんまんだ ばさらだん せんだんまかろしゃだや そはたや うんたらた かんまん」。
 僕は、3回唱え、住所、名前を言い、「いつもありがとうございます。鼻の調子はその後も順調ですよ。お導きいただき、ありがとうございます」とだけ伝え、境内をのんびり歩く。
 社長はお地蔵様の時と同様、何かをじっくりと時間をかけてお願いしている。
 
 余談になるが、この「お不動さん」の境内は、関東でもっとも気の良い場所のひとつと言われている。
 スピリチュアル・カウンセラーで有名な江原啓之さんも以前、ここと長野県の戸隠(とがくし)をあげていたと記憶している(写真は「お不動さん」の境内の童子像)。

 「今日は良かった」と参拝を終えて話す社長は会った時よりも表情が清々しい感じを受けた。
 時には、こうしたのんびりしていることが好機となることもあろう。

 春のひだまりの中を願い事を抱えたお地蔵さんが杖をついて歩き始める気配がしたような気がした。

2 件のコメント:

minori さんのコメント...

今度帰った時には、わたしもそこに連れて行ってくださいね。
実家の隣の家にあった9メートルのドングリの木が、区画整理で切り倒されることになり、従兄たち有志が力を合わせて、安全な場所に引っ越しさせるそうです。 いつかいっしょに「てんちの杜」を見に行けたらいいね。母校の隣だよ。この夏蛍が飛んでるかもしれないよ〜。

そわか さんのコメント...

「永代寺さん」「お不動さん」のすぐ近くには「富岡八幡宮」という神社があります。江戸三大祭りが夏には行われることでも有名で、地元の人に声をかけていただいてこれまでに2度、法被(はっぴ)を着て神輿(みこし)を担がせていただいたことがあるんですよ~。
境内には日本一の神輿(みこし)が納められているので(大きすぎて動かせないそうですが)、これもあわせて見に行きましょう。
「従兄たち有志」の皆さんはほんとに良いことをされましたね。長生きした木はことわりなく伐ると怒っていたずらをするという話をよく聞きます。大事に引っ越しさせてあげるなんて、ドングリの木は間違いなくとっても喜んでると思います。“影が真っ黒”になる南国の真夏の時期に、元気に育っているドングリの木陰でゆっくり話でもしたいものですね。