2007年11月18日日曜日

「世界の終わりとハードボルド・ワンダーランド」村上春樹



17日(土)
 村上春樹の「世界の終わりとハードボルド・ワンダーランド」を読む。
 正確には、20年ぶりに読み返した。当時は分厚いハードカバーで読んだが今回は文庫本2冊を買って電車の中で3日ほどかけて読み終えた(当時、ハードカバーはケース付きでほんとの”ハードカバー”だったような覚えがある。今は九州の実家の本棚の中に収まっているはず)。
 読み進むうちに最も驚いたのが、内容の多くをほとんどといっていいほど覚えていないということだった。
 若い頃は村上春樹の作品が好きで、それこそ新作の発売をまだかまだかと心待ちにして近所の書店の新刊コーナーを確認しに通っていたものだ。
 「国境の南 太陽の西」あたりから発売と同時にむさぼり読むようなことはなくなったが、「村上作品の中でもっとも好きな作品はなに?」と人に尋ねられると、迷うことなく僕はこの「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」をあげていた。
 そんな作品にもかかわらず(いくら20年ぶりとはいえ)、かなりの部分を記憶していないということ、また弾むような気持ちで読み進めないことに、自分が時の流れを経るに従ってどんどん薄情な男になってしまったような気がしてしまった。

 でも、実際には年を重ねるということが感性に大きな変化をもたらすことは避けられない。 「村上作品で、しかも思い入れの深い作品でもやっぱりそうなるのか」というショックは確実に残ったが、他の作家の他の作品ではもっと強烈にがっかりさせられること、時には哀しみさえ覚えながら本を閉じてしまうような状況に追い込まれることはたびたびある。
 僕はだいたい年間100冊~110冊ぐらい本を読むが、この中で、4、5冊ほどは、若い頃に読み、心に残っている作品を懐かしくなって読み返している。
 今年読み返した中にはトルストイの「アンナ・カレーニナ」、谷崎潤一郎の「細雪」があったが、正直言って読んでいる途中で幾度そのままそっと電車の網棚の上に置いていこうかと思ったことか!
 最初の頃は自分の感性の表層に、中年のお腹まわりにジワジワと雪が積もるように増えていく脂肪と同様、感受性を阻害する”厚皮”がついてきたのではないかと真剣に考えたこともあったが、本好きの人たちに訊くていくと結構、皆さん同じような思いをしていることがわかった。
 とはいうものの、20回以上読んでもそのたびに当時の懐かしさや新しい発見に出会える作品だってある。
 その1冊は村上春樹の「午後の最後の芝生」という作品だ。ふと無性に読みたくなり、それが出張先などということもあって家の本棚にはこの作品が収められている「中国行きのスロウ・ボート」の文庫本が4冊も並べられている。
 人との出会いと一緒で、穏やかにゆったりと心通わせながら長い月日をつきあっていける作品に出会う確率はそうそう高くはないのだ。
 
 と、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の中身とは別のことで長くなってしまったが、かつてのようなページをめくるのが億劫なほど心躍るような感情はなくなったが、村上作品の通底を流れる”真摯さ”のようなものにふれて気持ちが和み、そして背筋をしゃんと伸ばさなきゃ、という思いを抱かされた。「僕はこんなところが好きだったんだな」と思って、うれしさもこみ上げてきた。
 しばらく時間を置いてからかもしれないが、村上作品のそんなところにいつかまたふれてみたいと思う。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

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