2008年5月28日水曜日

中村天風「積極的な思考、言葉で幸福が叶う」


 「天風先生座談」宇野千代著。
 先日、友人に薦めてもらった1冊。全文1人称で書かれた講演録である。
 中村天風は、安岡正篤と並び称される人生哲学の“巨人”だ。
 名前は良く聞き知っていたが、本としてまとめられたものを読むのは今回が初めてである。

 経歴は、1876年東京生まれ。日露戦争で軍事偵察員として活躍。その後、当時、死病であった肺結核を患い欧米を遍歴するも治療のための答えは得られず、失意の帰国途中に立ち寄ったインドでヨガ聖者と出会う。弟子として2年半の修行で病を克服し、帰国後「心身統一法」を説き、多くの著名人から支持され“天風哲学”として広く世間に認められる。96年没。享年92歳。

 「天風先生座談」読後の感想は、20世紀前半という時代に、しかも日本に「この世の仕組み」について察知し、わかりやすく語ってくれるる人物が存在したということが無性にうれしくなった。

 僕自身はこのタイミングでこの著書を読めたことに深く感謝した。なぜなら数年前なら間違いなく理解は上辺だけにとどまったと確信するから。


 本書の中で<人はなぜこの世に生まれてきたのか>について、天風はこう言う。
 「人間はこの世の中に、うまいものを食いに来たんでもなけりゃ、好い着物を着に来たんでもなけりゃ、恋をしに来たんでもねェんだ。それは生きる場合の、ローヤルロードの道筋にある出来事で、この世に万物の霊長として生れ来しゆえんのものは、エレベーション(高める)という、造物主の目的に順応するためだ」


 また、<人が心身ともに健康に生きていくために気をつけること>として、
 「消極的な感情、情念を持たないようにすること」と説く。
 それは
 ①怒ること
 ②悲観すること
 ③やたらと理由なくして恐れること
 ④憎むこと
 ⑤恨むこと
 ⑥焼きもちを焼くこと
 次に、「煩悶(はんもん)」「苦悩」「憂愁」
 これらのいずれかが心の中に起これば、たちまち血液とリンパの弱アルカリ性が破壊されはじめ、心身の調和が崩れていくのだそうだ。


 そして、欧米の著名な医者にかかっても治らなかった、当時、死病といわれた肺結核がこの聖人のアドバイスのおかげで完治する。
 聖人は天風に、「心が健康に、運命をよき状態に作り直していく方法であり、(病い、苦しみに)捲きこまれない方法として、このようなアドバイスを贈る。
 「無理でもいいから、言って見ろ。俺がお前に、ハウ、ドュウユウ ドューときいたら、どんなことがあっても、アイ、アム、クワイトウェル(私は絶好調です)と言え」と。

 また、「あとは言葉に気をつけてください。気をつけろ、というのは、絶対に消極的な意思表示をする言葉を口にしないように。参った、助けてくれ、どうにもならない、苦しい、痛い、という言葉を口に出さないようにすることだ」とも言っている。

 そして、感謝に関することについても
 「一番いいことは、もしも自分の望むものが自分のものにならなかったら、現在持っているものを価値高く感謝して、それを自分のものにしてゆきなさい。
 こういう心がけで自分の人生に生きてゆくと、心の中の煩(わずら)いというものがなくなっちまいます。 何事に対しても、現在感謝。ああ、有難い。何に対しても現在感謝」

 宇野千代は「あとがき」で、天風から言われた次の言葉を紹介している。

 「人間は何事も自分の考えた通りになる。自分の自分に与えた暗示の通りになる。」

 折々で読み返したい珠玉の1冊である。

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1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

1896年生まれで、96年没ですと120歳まで生きたことになりますね(笑)。天風先生の命日は1968年12月1日です。